2023年度科目Ⅲ電気設備及び機器の問題の解答と解説です。
今回は問題9と問題10の後半部分となります。
前半部分、問題7と問題8は下記リンクまで。
科目Ⅲ 電気設備及び機器
一般財団法人 省エネルギーセンター
令和5年度(2023年度)エネルギー管理士 科目Ⅲ 電気設備及び機器
問題9 問題10
問題9 電気機器
(1)変圧器の損失と効率について考える
1)解説と解答
変圧器の損失の問題です。
無負荷損 鉄損(ヒステリシス損+渦電流損)と誘電体損に分けられます。
ヒステリシス損 Ph=σh×f/100×Bm^2
σh:鉄心材質によるヒステリシス定数 f:周波数 Bm:磁束密度の最大値
式より周波数に比例、最大磁束密度の2乗に比例します。
(1)ウ 誘電体損 (2)キ 周波数 (3)最大磁束密度
2)解説と解答
変圧器の最高効率となる条件は負荷損=無負荷損
効率η=出力/(出力+負荷損+無負荷損)
これにより最高効率となるには無負荷損が減少すれば負荷損も減少させる必要があります。
負荷損の大部分を占める銅損はPc=I^2×rで求めるため、出力と比例の関係にあります。
よって負荷点も低負荷側に移行します。
基準負荷率 定格容量に対する利用率 500kVA 超過 50%、500kVA 以下 40%
エネルギー消費効率及び測定方法
変圧器のエネルギー消費効率は現行基準と同様、「全損失(W)」とし、無負荷損(W)
及び負荷損(W)を「配電用 6kV 油入変圧器」(JIS C 4304)及び
「配電用 6kV モールド変圧器」(JIS C 4306)に定める方法により測定し、
当該全損失は以下の式で算出する。
全損失(W) = 無負荷損(W) + (基準負荷率(%)/100)^2× 定格容量に対する負荷損(W)
(4)オ 低負荷 (5)イ 50
(2)同期電動機
(2)同期電動機 解説と解答
制動巻線は回転子の磁極表面に設ける短絡された巻線です。
目的は負荷の急変などで乱調が起きる。この乱調を防ぐために設ける。
同期電動機では、始動巻線として利用される。制動巻線によって同期速度付近になったところで、
回転子に施された界磁巻線に励磁電流を流すことで、回転子は同期速度に引き入られる。
(6)ク 磁極面 (7)オ 乱調 (8)カ 励磁
(3)パワー半導体
(3)パワー半導体 解説と解答
直流チョッパは、スイッチングバルブデバイス、ダイオード、リアクトル、コンデンサなどが
主要な回路構成用品である。
通流率 スイッチングバルブデバイスのONとOFF の1 周期 をTとします。T=Ton+Toff
1周期に占めるON 割合を通流率と言います。 通流率 α=Ton/T
Ton<T なので、0<α<1 となります。
直流チョッパの平均出力電圧
昇圧チョッパ Vd=1/(1−α)×Es =1/(1−Ton/(Ton+Toff))×Es
=(Ton+Toff)/Toff×Es
降圧チョッパ Vd=αEs
昇降圧チョッパ Vd=α/(1−α)×Es
(9)オ ダイオード (10)ケ 通流 (11)イ (Ton+Toff)/Toff×Es
(4)三相変圧器
(4)三相変圧器 解説と解答
1)無負荷損と負荷損
効率η=出力P/(出力P+負荷損Pc+無負荷損Pi) 最大効率の時、負荷損Pc=無負荷損Piより
0.994=1000×0.5×1/(1000×0.5×1+Pc+Pi)
Pc+Pi=3.018(kW) 2Pi=3.018 Pi=1.509(kW) Pi=1509(W)
負荷損はPc=I^2×rで表せられます。つまり電流の2乗に比例することとなり容量に対しても2乗に比例すると言えます。P=VI
Pc´=(P´/P)^2×Pc
Pc‘変化後の負荷損 P´変化後の出力 Pc変化前の負荷損 P変化前の出力
50%容量の時、1509(W)を変化前の負荷損とすると定格負荷時の負荷損は
Pc´=(100/50)^2×1509
Pc‘=6036(W)
(A)1509 (B)6036
2)効率
効率η=出力P/(出力P+負荷損Pc+無負荷損Pi)
力率80%なので出力に0.8をかけます。
Piは固定なのでPi=1509(W)となります。
定格負荷時の負荷損はPc‘=6036(W)です。
効率η=1000×0.8/(1000×0.8+6.036+1.509)
効率η=99.1%
(C)99.1
3)短絡インピーダンス 短絡電流
%インピーダンスを求める為に%抵抗を求めます。
%r=Pc/Pn =6036/1000×10^3 =0.6036(%)
%リアクタンスを求めます。問題文よりx/rの比は7.05です。
%x=7.05×0.6036 =4.25538(%)
%z=√(%r^2+%x^2) =√(0.6036^2+4.25538^2) =4.30(%)
定格電流 短絡電流 短絡インピーダンス(%インピーダンス)の関係
%Z=In/Is In定格電流 Is短絡電流
0.043=In/Is 問題よりIs/In=23.3
(D)4.30 (E)23.3
問題10 電気機器
(1)三相誘導電動機
1)問題
2)問題
1)解説と解答
すべりsを求める公式
滑りs=(同期速度Ns−実回転速度N)/同期速度Ns
滑りSが0より小さいときは実回転数が同期速度より速い時である。
減速させようと働く発電機動作となる(回生ブレーキ)
誘導機の回転が回転磁界と同方向である。
誘導機の発生トルクは負となる
発生トルクは負となることから制動トルクです。
誘導機の発電利用には系統からの励磁電流が必要になります。
固定子に三相電源を接続する必要があるのです。
(1)ウ 制動 (2)カ 励磁電流
2)解説と解答
すべりsを求める公式
滑りs=(同期速度Ns−実回転速度N)/同期速度Ns
滑りSが1より大きいときは実回転数が同期速度と反対方向に回転している時である。
回転磁界を切り替え減速させようと働く(逆相制動)
誘導機の回転が回転磁界と逆方向である。
誘導機の発生トルクは正となる
問題文の3線中2線を切り替えると電動機は逆回転します。(逆相制動)
制動時の電力損失は二次抵抗(回転子回路)で熱として放出されます。
対して1次巻線は固定子となります。
(3)オ 逆相 (4)ウ 二次抵抗
(2)永久磁石形同期電動機
1)問題
2)問題
3)問題
4)問題
1)解説と解答
励磁(界磁)巻線に永久磁石を使用した同期電動機である。
(5)ケ 励磁
2)解説と解答
永久磁石形同期電動機の発生トルク
τ=p×φm×ia×cosβ+1/2×p×(Ⅼq-Ⅼd)×ia^2sin2β
左辺がマグネットトルク、右辺が突極性によって生ずるリラクタンストルクを表す。
(6)イ 積 (7)オ 突極
引用ページ 日本電気技術者協会 PM同期モータについて
3)解説と解答
モーター巻線に流した電流によって生じる回転磁界とローターに内蔵された永久磁石の磁力の力で
ローターが回転します。
(8)ア 回転磁界
4)解説と解答
永久磁石形同期電動機の制御方式
id=0制御
最大トルク電流制御
弱め磁束制御
高速回転領域での誘起電圧の上昇を抑えてインバータの耐圧条件を緩和する制御として使用される。
(9)ア トルク (10)オ 弱める
(3)三相かご型誘導電動機 計算
1)問題
1)解説と解答
滑りsを求める公式
s=(Ns−N)/Ns
Ns 同期速度 N 回転速度
s=(Ns−1440)/Ns ①
同期速度Nsを求める公式
Ns=120f/p
f 周波数 p 極数
Ns=120×50/4 =1500min-1
s=(Ns−1440)/Ns ①
s=(1500−1440)/1500
s=60/1500 =0.04 %に直すには×100
4.0%
トルクを求める式
P=ωT
P 出力 ω 角速度 T トルク
ω=2×π×n(rad)
πは問題文より3.14 n 回転速度(1秒間)
T=P/ω
T=P/(2×π×n) =15×10^3/(2×3.14×1440/60)
=99.5(N・m)
定格回転速度の1440min-1は1分当たりの数値です。
角速度を求める時、単位は(rad)なので回転速度は1秒当たりの数値になります。
A 4.0 B 99.5
2)問題
2)解説と解答
定格出力と二次銅損と滑りの関係
二次入力P2:定格出力Pm:二次銅損Pc2
P2:(1-s)P2:sP2
二次入力P2を求めます。
Pm=(1−s)P2 15×10^3=(1−0.04)×P2
P2=15625(W)
Pc2=sP2 =0.04×15625
Pc2=625(W)
C 625
3)問題
3)解説と解答
効率=出力/入力
入力=出力+損失
0.885=15000/入力 入力=16949(W)
16949=15000+損失 損失=1949(W)
損失の合計は1949(W)となる。
D 1949
4)問題
4)解説と解答
二次銅損は2)より625(W)です。一次銅損と二次銅損は等しいと問題文より
定義されているので一次銅損と二次銅損の合計は625×2=1250(W)となります。
全損失は3)より1949Wです。
問題文より固定損は銅損以外と考えられるので1949−1250=699(W)
E 699
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